【ネタバレ注意】中二病でも恋がしたい!第十話いまさら感想【世界一真面目に考察してみた】
ネタバレあり!
執筆者は2週目なので、1期最終話まで見ていない方はブラウザバック推奨です…!
第十話です
最終話に向けて怒涛の展開が始まります
文化祭準備で抱き合ったことがきっかけとなり、富樫と六花の距離は急接近
「極東魔術昼寝結社の夏」の方も、文化祭に演劇で参加
充実した毎日、全ては順調であるかに思われた…そんな中、部室を訪ねる人物が。それは六花の母親だった
・告白
夕暮れの中抱き合った六花と富樫。お互いを想う気持ちに正直になり、六花は凸守、富樫は一色にそれぞれ打ち明けます
六花を応援しつつ、寂しさを隠しきれない凸守。切ない
人を好きになるのに、理由なんてないのだぜ?
ギャグキャラとしても富樫の理解者としても、作品を盛り上げるのに多大な成果を上げた一色、謎の圧力により2期ではほとんど出番がなくてかなしみ
また、告白シーンでは六花の愛傘「シュバルツゼクス・プロトタイプMk-2」が何度も六花をアシストします
富樫は大事な話があると六花を外に呼び出しましたが、突然の雨に見舞われてしまいます
六花は傘を持たない富樫と相合傘をしますが、お互いまだ遠慮があるため反発する磁石のように距離を取り、狭い傘からふたりともはみ出て、肩が半分濡れてしまっています
このままじゃいけないと富樫は雨が降る街の中、告白しようと腹を決めますが、その直前、強い風が吹いてシュバルツ(略)が橋の下に吹き飛ばされてしまいます
傘を追いかけるうちに、雨も、人の目も届かない橋の下で富樫とふたりきりにされた六花は
私、勇太が…好き
傘で顔を隠しながら富樫に告白します
・「…無責任だ」
夢見心地で帰宅した富樫。すると、彼を待っていた十花さんに「話がある」とレストランに連れ出されます
働いているレストランのイタリアの本店に修業の誘いがかかり、十花さんは日本を離れることになりました
そこで、十花さんの代わりにお母さんが六花と一緒に住むことになります
しかし、六花に父の病状を教えなかったことが原因で、お母さんと六花の間には諍いができていました。そのことをお母さんが何度謝っても六花は聞き入れず、和解しないまま別れてしまい今に至るというのです
自分がいなくなった後、六花たちが上手くやれるのかが心配な十花さんは、テーブルに手をつき富樫に頭を下げます
“頼む、なんとかしてくれ
お前が言えばきっと聞く
「まともになれ」って、お前が言えば!”
「中二病でも恋がしたい!#10 聖母の…弁当箱(パンドラズ・ボックス)」より抜粋
現実から目を背けて過去の中で止まったままの六花が、父の死を受け入れ母と和解するためには、中二病を卒業することが不可欠なのです
富樫は「六花は充分まともです」と言い返します
六花にとってあの眼帯は身を守る鎧だということ
どうしようもない現実は本当は全部わかっているけど、心の中にわだかまりがあって、それを受け入れることができないこと
十花さんやお母さんの言うことを聞いて、父の死を現実だと認めることで、不可視境界線や邪王真眼、ここ数年の自分の人生そのものが何の価値もない虚構のものだったと突きつけられるのが怖いということ
六花の気持ちを代弁しているかのような、実に的確な台詞です
というか六花の心情そのものと言ってもいいでしょう
しかし、十花さんは非常に核心を突いた返答で富樫を黙らせます
“あいつの言うことを肯定して、何が解決する?
あいつが求めているものは、永久に手に入らないんだぞ!?
それを肯定するのは…無責任だ”
「中二病でも恋がしたい!#10 聖母の…弁当箱(パンドラズ・ボックス)」より抜粋
文化祭本番、演劇の衣装を身に纏った富樫は十花さんとの会話を思い出します
六花を肯定し続けてきた今までの自分は無責任だったのかな…と、六花を肯定してできた部活の、六花を肯定してできた中二病演劇の小道具の指貫グローブをはめながら、富樫は今までの行動を振り返ります
しかし、いざ六花を前にすると、六花の中二病を肯定する自分がいます
六花には幸せでいてほしい
そんな思いが二律背反を生み、真逆な二つの命題に挟まれた富樫は葛藤し、悩みます
このままでいいのかと考える富樫の前に、ひとりの女性が現れます
六花の母親です
六花の不在を伝えると、六花母は富樫に弁当箱を渡し「あの子、やっぱりまだ私に会いたくないでしょうから…」と、自虐的に微笑みます
六花と母の間に確実に存在する溝を見せつけられた富樫
六花が母親と和解しないのは、いつまでも中二病のまま、現実を見ようとしないから
そして、夏休みの実家での出来事が脳裏によぎり、六花の現実逃避の手助けをしたのは、六花と母親の溝を深めたのは自分自身なのだと自己批判します
家族仲が良い富樫は、六花たちの置かれた状況を憂慮し、一刻も早く自分たちと同じようにならねばならないと先走ります
本番直前、富樫を迎えに来た六花、丹生谷、くみん先輩
六花を見て、意を決した表情の富樫
今までの無責任の責任を取るため、富樫は絶対禁忌の一言を、六花の心に突き刺します
・「眼帯、取れ」
富樫がそう言うと、時間が削り取られたかのように、いきなり後夜祭のシーンに切り替わります
まるで別世界のように盛り上がる後夜祭のステージを、富樫は憔悴しきった表情で眺めています
あの後何が起こったのかは、回想という形でセリフなしで数秒だけ流れますが、どうしても六花に現実を見させるために、かなり激しく言い争ったように見えます
一期の出来事を六花視点で振り返った映画「小鳥遊六花・改」でも、一連のシーンは記憶から抜け落ちたように丸々飛ばされていたことからも、六花にとってとてもショッキングな出来事だったことがわかります
迷い、後悔が見て取れる富樫に、丹生谷は「これで良かったんだと思うよ」と声をかけます
中二病は、いつか卒業する定め
しかし六花は、複雑な家庭の事情があったことから、卒業する機会を失ったまま高校生になってしまいました
多少強引でも、富樫がその機会を作ったのだと思えば、それも確かに六花のためになる行為です
しかし、富樫にはそう割り切れない理由があります
六花の眼帯は「現実から目を背ける」ことのメタファーであり、富樫が「眼帯を取れ」と言ったのは、「現実を見ろ」と言ったのと同じ意味です
前話の屋上のシーンで不可視境界線の存在を肯定した矢先、富樫は六花を裏切った形になってしまいます。無責任に六花を気持ちよくさせる台詞を吐いたツケが回ってきたのです
富樫はどこかにいなくなった六花を探すために場を離れかけますが、なんと後夜祭のステージに立つ六花を目にします
飛び入りでステージに参加した六花は「見上げてごらん夜の星を」を歌います。今にも壊れてしまいそうな、囁くような切ない歌声に、呼吸するのも忘れて聴き入ってしまいました…
目を疑う富樫に、どこからか現れた十花さんが「パパが好きだった歌だ…」と頰に汗を浮かべて教えてくれます
煌々と光る黄色いスポットライトに照らされながら、六花はワンコーラス歌い上げます
小ネタ
凸守が六花のサーヴァントになったのは2年と少し前のこと
文化祭の名前は「銀杏祭」
富樫が六花母から渡された弁当箱から「現実」を感じたのはイチョウの樹の下
また、六花に「眼帯、取れ」と言ったのも同じイチョウの樹の下
・邪王真眼に捧げる鎮魂歌
第十話で特に印象的だったのは、AパートBパートエンディングの後に、不意打ちのように20秒弱のCパートがあったことでしょう
ワンコーラス歌い上げた六花は、司会者の問いかけを無視して右目の眼帯を外します
そこにはもう邪王真眼はなく、ステージに立っているのは普通の「小鳥遊六花」でした
他ならぬ富樫に言われて、六花は眼帯を取ることを決意しました。それは、邪王真眼の喪失、不可視境界線の否定、そして父の死を認めることを意味します
十花さんとの会話で富樫が触れた六花の心のわだかまりとは、父の死を悼むこと
六花にとって父の死はあまりに突然のことだったので、当初は受け入れることができず妄想の世界に逃げ込み、逃げに逃げ続けて3年が経過し、止まったままの六花を置き去りにして世界はどんどん変わっていって(売地になった実家がそれを如実に表している)、父の死を悼む機会を逃してしまったのです
つまり、「見上げてごらん夜の星を」は、お父さん、ひいては「邪王真眼」へのレクイエムだったのです
それを多くの生徒…富樫も見ているであろう後夜祭で歌うことで、「邪王真眼・小鳥遊六花」を殺す儀式を遂げたのです
しかし、「邪王真眼・小鳥遊六花」は殺せても、「邪王真眼」そのものは消し去りきれなかった六花は…おっと、ここから先は最終話ですね
つづく