【ネタバレ注意】中二病でも恋がしたい!最終話いまさら感想【中二病の存在理由】
ネタバレあり!
執筆者は2週目なので、1期最終話まで見ていない方はブラウザバック推奨です…!
早いものでもう最終話です
母とお墓参りをする六花
墓石に上から水をかけてしまい、母に「急に上からかけたら、パパ冷たいって言うわよ」と優しく咎められる六花でしたが、六花はお墓と父を結びつけることがまだできていないようで、ピンときていない顔をします
六花は、心の中ではまだ父の死を認めていなかったのです
それから一日二日後のことでしょうか
まだ帰ってこない六花を心配する富樫
学校の机の中には教科書類が整理されずに置かれたままになっていて、いきなりいなくなるなんてことはないと思っていても胸騒ぎが治らない富樫
部室を訪れるとそこには謎のロングヘア美少女が。なんと中二病を卒業した凸守でした
つい先日泣かせた相手との再会がコミカルに描かれていますが…いや富樫一言謝れ!いくら正論だとしてもあれは八つ当たりだろ!
謝る隙さえ与えないあまりに優秀なコメディリリーフ凸守ちゃんに救われつつ、今度は一色が「勇太!先輩が…くみん先輩が…」と、部室に飛び込んできます
左腕の包帯に、右目の眼帯
くみん先輩は邪王真眼を六花から伝承していたのです
あぁ先輩…昼寝が趣味の先輩が休み時間なのに頑張って起きてるよぉ…
中二病アピールのために飲んでいた小瓶の液体もあれ実は中身眠眠打破とかなんじゃないでしょうか
困惑気味の富樫は、くみん先輩から「邪王真眼は生き続けなくてはならない。ダークフレイムマスターがいる限り」という六花からの意味深な言伝を聞かされます
家ではなんでもない風を装う富樫でしたが、
葛葉から六花の部屋が解約されていることを聞き、たまらず駅に走りますが、時間が遅く電車は来ないと駅員さんに言われます
失意のまま帰宅した富樫に届いた一通のメール
“ママと、じいちゃんもばあちゃんも幸せそうで、私がそうするって言ったらとても安心して、だから、きっとそれが一番良いんだと思う
勇太もそう思うよね?”
「中二病でも恋がしたい!#12 終天の契約(エターナル・エンゲージ)」より抜粋
六花がお墓参り→中二病卒業→それならまた皆で実家で暮らそう→家族のみんなが幸せ
思えば六花が団地に引っ越してきたのも、実家が嫌で高校進学を機に十花さんの所に逃げ込んできたようにも見えます(あくまで妄想です。アニメだけでは、六花の家庭の事情を把握することは難しいです)
六花を自分から遠ざけたのは、六花にこんな選択をさせたのは他ならぬ自分自身なのだと、富樫は悩みます。もうどうしようもなく悩み、悩みが煮詰まってきた頃、自分に手紙が届いていたことを思い出します
黒い便箋に赤いロウで閉じた封、送り主は「ダークフレイムマスター」
それは過去の自分が、2年後の自分に宛てて書いた手紙でした
年を重ねた自分が中二病を卒業しているであろうことを見越して、いつの日か情熱が枯れてしまうことを察して、そんな未来の自分に宛てて書かれた手紙でした
手紙では中二病を卒業する原因をマヤの予言のなんたらかんたらと言っていましたが、実はOPのサビ前に、マヤの予言について書かれた富樫の闇ノートが一瞬だけ出てきています。OP回収ですね
手紙を読み終え、呆れたように笑う富樫。封筒に一枚のメダルが入っていることに気付き、おもむろにそれを指で弾きます
手の甲に着地したメダルは「裏」
「…しょうがねぇなァ」
辛い現実に打ちのめされていたところを、過去の自分から激励され、富樫は再び立ち上がります
中二心をくすぐる展開です
ダークフレイムマスターの片鱗を思わせる中二全開の富樫にも、ゾクッとするようなカッコよさがあります
違和感も滑稽さもなく、ただカッコいい展開に持っていき、全視聴者に中二病のカッコよさを突きつけたこのシーンは、「中二病」を描き続けた製作チームの勝利と言ってもいいでしょう笑
六花を迎えに行く覚悟を決めた富樫
電車は出ないので一色の自転車を借ります
六花の実家までの具体的な距離は分かりませんが、一色のリアクションから相当無茶な距離だと分かります
富樫たちの団地の最寄駅の菱山駅のモデルとなった京阪石山駅から、六花の実家の最寄り駅の東浜見駅のモデルの東美浜駅までの距離はおよそ100km。一色の自転車を時速20km/hでブッ飛ばしたとしても5時間かかります
まぁ、両方とも外観のモデルとなった駅があるだけのまったく架空の駅なので、実際の距離は富樫のみぞ知るといった具合にこの考察には何の意味もないわけですが、とにかく富樫くんは六花のためにメチャクチャ頑張ったのです。愛の力です
道中、富樫を待っていたくみん先輩に引き留められ、六花が邪王真眼に目覚めた理由を聞かされます
お父さんが亡くなった実感が湧かない六花は、本音を押し殺してお母さんや十花さんに合わせて生きてきたこと
家を売却して実家に住むまでの間、一時的に十花さんの団地に泊まっていた六花が、偶然ダークフレイムマスターを目にしたこと
誰に遠慮するもなく、自分の妄想の世界を正直に生きるその姿を素敵だと思ったこと
“六花ちゃんは、中二病に救われた女の子
富樫くんを見て中二病と、その想いの強さに憧れた女の子
あなたの力に魅せられ、あなたの力を真似しようとした女の子
だから富樫くんだったんだよ
富樫くんじゃなきゃダメだったんだよ
六花ちゃんは、ずっと、ずっとずっと、ずっとーー”
「中二病でも恋がしたい!#12 終天の契約(エターナル・エンゲージ)」より抜粋
名前を呼ばれた気がして窓の外を見た六花
しかし誰もおらず、寂しさが込み上げて泣いてしまいます
ひとりぼっちの部屋の中で泣く六花は城に幽閉された囚われのお姫様か、はたまた閉鎖病棟に閉じ込められた精神病患者か
ただ一つ確実なのは、そんな六花を連れ出すために現れた富樫は、あの頃のダークフレイムマスターにも劣らない本物のヒーローだということです
“六花、来い!
つまらないリアルへ戻るのか!?
それとも、俺と一緒にリアルを変えたいと思わないのか!?”
「中二病でも恋がしたい!#12 終天の契約(エターナル・エンゲージ)」より抜粋
必死の問いかけに応えた六花は、本音を言えなかった過去の自分の呪縛を断ち切り、家を飛び出します
集結した結社の面々の力を借りつつ、富樫と六花は家から逃げ出すことに成功します
富樫は自転車を飛ばし、六花が不可視境界線を見た浜辺に連れていきます。ちょうど船の光が集まり、不可視境界線ができていました
あれだけ探していた不可視境界線を見ても、六花は「でもあれは船の光。ただの…光」と表情を落とします
そんな六花に、富樫は
爆ぜろリアル…!
弾けろシナプス…!
邪王真眼の原点、ダークフレイムマスターの桁外れの爆発的な妄想力によって、六花を再び中二病の世界に誘い込みます
富樫「これが不可視境界線だ
あの光がお前を見ている
伝えるが良い、お前の想いを
お前がずっと言えなかった想いを」
「中二病でも恋がしたい!#12 終天の契約(エターナル・エンゲージ)」より抜粋
六花は不可視境界線と向き合い、その向こうにいる父に「さよなら」を言います
六花は父の死を悼み、過去を心から受け入れます
六花の中で止まっていた時が動き出し、いつしか夜が明け、水平線の向こうから朝日が昇り、六花を照らすのでした
・「中二病」とは、何だったのか
“人は時に妄言を吐き、突然変わる世界を夢想し、遠い未来を想像し、存在しない大恋愛を頭の中に描く
それは、産まれてから死ぬまで、人の中で延々と繰り返される、果てしなく繰り返される、悲しくて、恥ずかしくて、愛おしい、「自意識過剰」という名の病
「自分」という名の、避けては通れぬ営み
そう、人は一生、中二病なのだ”
「中二病でも恋がしたい!#12 終天の契約(エターナル・エンゲージ)」より抜粋
この作品は「中二病」を「等身大の自分以上のものを演じる営み」と解釈しています
この件についてはラストの大塚芳忠さんの語り、また、丹生谷との会話が説明しています
演劇部に体験入部した丹生谷
でも、部長があまりに熱血的で、まるで熱血漢を演じているように見えてなんだか冷めてしまったといいます
富樫「何が言いたいんだよ」
丹生谷「別に?ただ結局、人はいつも何かに病んでいるのかなぁって」
富樫「…深いな」
丹生谷「浅いのよ。富樫くんが」
中二病に造詣が深い元モリサマーらしいお言葉です
熱血部長を演じている演劇部の部長や
中二病だった過去を捨てて、普通の高校生を演じる丹生谷や富樫も
自意識にかられて等身大の自分以上の何かを演じているのです
それこそが中二病
人は一生中二病なのです
だから無理に治そうとか、人生の恥部だとか思うことはないんですよと
人間讃歌は中二病の讃歌なんですよと
人間の素晴らしさは中二病の素晴らしさなんですよと
・この作品は何を伝えたかったのか
その答えはED後のエンドカードに記されています
公式の画像が見当たらなかったので「中二病 エンドカード」で各自調べてみてください。簡単に見つかります←
「現実に抗え!」
邪王真眼を捨てた六花は、辛い現実に押し潰されて、現実に負けてしまいます
でも、ダークフレイムマスターの力を借りた富樫や、極東魔術昼寝結社の夏の面々によって、六花を現実から連れ出すことに成功します
中二病を嫌う真面目なおじいちゃんや、国家権力のお巡りさんのパトカーを相手に自転車で逃げ続ける富樫たちのラストシーンは、まさに中二病が「現実」に抗うさまを体現しているのです
人間生きていると辛いことのひとつやふたつ出てきます
そんなとき、現実に真正面からぶつかって精神を消耗するより、ときには妄想の力を借りることでほどよく現実逃避しつつうまくやっていきましょうという、そういう教訓なのかなと思います
おれも中学生の頃は友達がいない自分を正当化するために「群れるのは好きじゃない…」と孤高の一匹狼を気取ったり、「おれには実はすごい力があるんだ!」と思い込むことで、嫌いな先生やクラスメイトを前にしても心に余裕ができたりと、六花ほどじゃないにしても中二病に救われた経験があります
現実に真っ向から立ち向かっても負けて惨めになるだけ
それなら、自分以上の何者かを演じ、その鎧を纏って現実と挑めばいいのデス
「中二病でも恋がしたい!」は、明日を戦う力を与えてくれる、大好きな作品です
今回、見返すにあたり感想をブログに書いていきましたが、1周目よりも多くのものを感じ取ることができて、この作品をより深く理解できたと思います
また、このブログが、今日までお付き合いいただいたあなたの、この作品の理解を深める手助けになったり、ほんの少しでも面白がってもらえたなら、何より嬉しいことでございます
ククク…
ハーッハハハ!
我がアカシック・レコードをその魂に刻みし者よ!
我はしばしこの世界から離脱する!
しかし案ずるな!
貴様に宿りし闇の波動は、いずれ我らを再び混沌なる運命の輪廻の内に交わらせることだろう…!
運命が我らを呼び戻すまでの間…さらばだ!
現実に抗え!
【ネタバレ注意】中二病でも恋がしたい!第十一話いまさら感想【片翼の…堕天使】
ネタバレあり!
執筆者は2週目なので、1期最終話まで見ていない方はブラウザバック推奨です…!
第十一話です
六花が眼帯を取ってから3週間が経過した頃の話です
総括すると「ダークフレイムマスターがクソ野郎な回」ですね
・「小鳥遊さん」
中二病を卒業した六花は、丹生谷のアドバイスを頼りに普通の高校生であろうとします
外見や言葉遣いから直していき、凸守のことも「私はもう卒業したの」と相手にしません
クラスメイトとの友達グループに属し、俗っぽい話題に話を合わせます
突き抜けた中二病で周囲を巻き込み、カリスマ性さえあった本作の裏主人公の六花が、普通にクラスメイトと話を合わせてヘラヘラしている姿は、正直見れたものではないです
これで本当によかったのか、六花はそれでいいのか、富樫は悩みますが、六花から眼帯を奪った自分がそれを言うのはあまりに無責任だとその悩みを押し殺します
また、丹生谷は学園祭での劇が評価されて演劇部にスカウトされます
作中、異なる種類の黄色い花が何度も登場します
自分を取り巻く環境が急変していることを自覚する富樫
眼帯を取って3週間、「極東魔術昼寝結社の夏」に赴いた六花は宣言します
「この結社…いや、この部は…今日を限りに解散する」
凸守からすればたまったものではないでしょう
自分のマスターがダークフレイムマスターに奪われた上に、邪王真眼の力さえ失ってしまったのですから…
ついに、本作の元気印、優秀なコメディリリーフだった凸守が折れます
結社の解散を泣きながら反対しますが、それを咎めることのできない富樫たちに代わって、丹生谷が凸守を抱きしめて宥めます
・お墓参り
お母さんに心配させないように、部屋の中二病アイテムを処分していく六花と富樫
捨てるものと取っておくものの区別がつかない六花は、ベッドの黒い天蓋カーテンを外すべきかの判断を富樫に委ねます
六花の中二病を卒業させた自分の発言に責任を持つため、富樫は外す選択を下し、六花は力なく「ありがとう」と言います
富樫の言うことを聞いて中二病を卒業すると決めた六花でしたが、自分の意思で決めたことではないので、心の奥底ではまだ揺れ動くものがあったのでしょう
なので、この「ありがとう」は、判断ができない自分の代わりに決めてくれてありがとう、というより、自分の奥底に眠るモヤモヤした未練めいた迷いにトドメを刺してくれてありがとう、といった意味でしょうか。この時点で、六花が富樫に依存していることがわかります
それを裏付けるのが、父のお墓参りに行くかどうかを富樫に相談するシーンです
ママが…一緒にお墓参りに行きたいって言ってる
パパのお墓に
どう思う?
「中二病でも恋がしたい!#11 片翼の…堕天使(フォーリン・エンジェル)」より抜粋
カーテンの比じゃない重大な選択を迫られ、黙り込む富樫
やがて口を開き、「お前は…どう思うんだよ」と質問を質問で返して選択を放棄します。しかしその回答は言わば六花を追い詰めるチェックメイト。将棋で言えば「詰み」の一手
六花は、「行けばママは喜ぶと思う」という当たり前のことを富樫に言わされます
だったらそれでいいんじゃないか?六花がそうしたいなら、と、富樫は…富樫は…
富樫てめーこの卑怯者めええええええ!
地に堕ちたなダークフレイムマスタァァァァ!
くっそおおおおおおおおおお!
でも自分が富樫だったらなんて言うかと聞かれたら「お前は…どう思うんだよ?」としか言えない…ちくしょう…強く…なりてぇ…!
心のどこかで引き止めてくれることを期待していた六花は、その願いが叶わないと悟り、富樫と小指を合わせてお墓参りに行くための勇気をもらい、またしても「ありがとう」と言います
中二病を卒業するという辛い選択も、富樫がそう望むなら卒業してみせる六花
本当は行きたくなかったお墓参りも、富樫が行けと命じたなら自分の気持ちは蔑ろにして実行してしまいします
六花はもう富樫に完全に依存しています
お墓参りに行く日、電車が来るまでの待ち時間、六花は何度も富樫の口から自分を引き止める台詞が出てくることを期待します
しかし、それも叶わず、電車が到着
電車に乗り込み、駅のホームと隔てられた場所にいる六花の顔を見て、富樫は彼女を引き止めるための言葉が喉まで出かかりますが、とうとうそれを飲み込んで無責任に微笑み、六花を見送ります
なぜ引き止めなかったのか、なぜ不可視境界線を一緒に探そうと言わなかったのかと凸守に詰め寄られますが、
「言って…どうするんだよ。言ってあいつを喜ばせて、何になるんだよ!」
自分に言い聞かせるように、中二病を根底から否定します
「いくら思っても、いくら信じても…そんなものないんだよ!」
凸守「そんなの…そんなの、分かってるデスよぉ…」
不可視境界線なんてない。そんなことはわかっている
でも六花を救ってほしい
六花を救えるのは富樫だけなのだから
富樫は中二病を否定することに囚われて、凸守の本音に、自分が本当に言うべきだった言葉に気づきません…
最低ですね富樫くん
六花のみならず凸守にまで現実という刃を突き刺し、想像力という翼を削ぎ落とし、地面に縫い付けてしまいました
六花を実家に送ってしまった富樫
整理された部屋、荷物の多いスーツケース
六花は帰ってこないんじゃないかと不安になりますが、時既に遅し
物語は最終話へ
つづく
【ネタバレ注意】中二病でも恋がしたい!第十話いまさら感想【世界一真面目に考察してみた】
ネタバレあり!
執筆者は2週目なので、1期最終話まで見ていない方はブラウザバック推奨です…!
第十話です
最終話に向けて怒涛の展開が始まります
文化祭準備で抱き合ったことがきっかけとなり、富樫と六花の距離は急接近
「極東魔術昼寝結社の夏」の方も、文化祭に演劇で参加
充実した毎日、全ては順調であるかに思われた…そんな中、部室を訪ねる人物が。それは六花の母親だった
・告白
夕暮れの中抱き合った六花と富樫。お互いを想う気持ちに正直になり、六花は凸守、富樫は一色にそれぞれ打ち明けます
六花を応援しつつ、寂しさを隠しきれない凸守。切ない
人を好きになるのに、理由なんてないのだぜ?
ギャグキャラとしても富樫の理解者としても、作品を盛り上げるのに多大な成果を上げた一色、謎の圧力により2期ではほとんど出番がなくてかなしみ
また、告白シーンでは六花の愛傘「シュバルツゼクス・プロトタイプMk-2」が何度も六花をアシストします
富樫は大事な話があると六花を外に呼び出しましたが、突然の雨に見舞われてしまいます
六花は傘を持たない富樫と相合傘をしますが、お互いまだ遠慮があるため反発する磁石のように距離を取り、狭い傘からふたりともはみ出て、肩が半分濡れてしまっています
このままじゃいけないと富樫は雨が降る街の中、告白しようと腹を決めますが、その直前、強い風が吹いてシュバルツ(略)が橋の下に吹き飛ばされてしまいます
傘を追いかけるうちに、雨も、人の目も届かない橋の下で富樫とふたりきりにされた六花は
私、勇太が…好き
傘で顔を隠しながら富樫に告白します
・「…無責任だ」
夢見心地で帰宅した富樫。すると、彼を待っていた十花さんに「話がある」とレストランに連れ出されます
働いているレストランのイタリアの本店に修業の誘いがかかり、十花さんは日本を離れることになりました
そこで、十花さんの代わりにお母さんが六花と一緒に住むことになります
しかし、六花に父の病状を教えなかったことが原因で、お母さんと六花の間には諍いができていました。そのことをお母さんが何度謝っても六花は聞き入れず、和解しないまま別れてしまい今に至るというのです
自分がいなくなった後、六花たちが上手くやれるのかが心配な十花さんは、テーブルに手をつき富樫に頭を下げます
“頼む、なんとかしてくれ
お前が言えばきっと聞く
「まともになれ」って、お前が言えば!”
「中二病でも恋がしたい!#10 聖母の…弁当箱(パンドラズ・ボックス)」より抜粋
現実から目を背けて過去の中で止まったままの六花が、父の死を受け入れ母と和解するためには、中二病を卒業することが不可欠なのです
富樫は「六花は充分まともです」と言い返します
六花にとってあの眼帯は身を守る鎧だということ
どうしようもない現実は本当は全部わかっているけど、心の中にわだかまりがあって、それを受け入れることができないこと
十花さんやお母さんの言うことを聞いて、父の死を現実だと認めることで、不可視境界線や邪王真眼、ここ数年の自分の人生そのものが何の価値もない虚構のものだったと突きつけられるのが怖いということ
六花の気持ちを代弁しているかのような、実に的確な台詞です
というか六花の心情そのものと言ってもいいでしょう
しかし、十花さんは非常に核心を突いた返答で富樫を黙らせます
“あいつの言うことを肯定して、何が解決する?
あいつが求めているものは、永久に手に入らないんだぞ!?
それを肯定するのは…無責任だ”
「中二病でも恋がしたい!#10 聖母の…弁当箱(パンドラズ・ボックス)」より抜粋
文化祭本番、演劇の衣装を身に纏った富樫は十花さんとの会話を思い出します
六花を肯定し続けてきた今までの自分は無責任だったのかな…と、六花を肯定してできた部活の、六花を肯定してできた中二病演劇の小道具の指貫グローブをはめながら、富樫は今までの行動を振り返ります
しかし、いざ六花を前にすると、六花の中二病を肯定する自分がいます
六花には幸せでいてほしい
そんな思いが二律背反を生み、真逆な二つの命題に挟まれた富樫は葛藤し、悩みます
このままでいいのかと考える富樫の前に、ひとりの女性が現れます
六花の母親です
六花の不在を伝えると、六花母は富樫に弁当箱を渡し「あの子、やっぱりまだ私に会いたくないでしょうから…」と、自虐的に微笑みます
六花と母の間に確実に存在する溝を見せつけられた富樫
六花が母親と和解しないのは、いつまでも中二病のまま、現実を見ようとしないから
そして、夏休みの実家での出来事が脳裏によぎり、六花の現実逃避の手助けをしたのは、六花と母親の溝を深めたのは自分自身なのだと自己批判します
家族仲が良い富樫は、六花たちの置かれた状況を憂慮し、一刻も早く自分たちと同じようにならねばならないと先走ります
本番直前、富樫を迎えに来た六花、丹生谷、くみん先輩
六花を見て、意を決した表情の富樫
今までの無責任の責任を取るため、富樫は絶対禁忌の一言を、六花の心に突き刺します
・「眼帯、取れ」
富樫がそう言うと、時間が削り取られたかのように、いきなり後夜祭のシーンに切り替わります
まるで別世界のように盛り上がる後夜祭のステージを、富樫は憔悴しきった表情で眺めています
あの後何が起こったのかは、回想という形でセリフなしで数秒だけ流れますが、どうしても六花に現実を見させるために、かなり激しく言い争ったように見えます
一期の出来事を六花視点で振り返った映画「小鳥遊六花・改」でも、一連のシーンは記憶から抜け落ちたように丸々飛ばされていたことからも、六花にとってとてもショッキングな出来事だったことがわかります
迷い、後悔が見て取れる富樫に、丹生谷は「これで良かったんだと思うよ」と声をかけます
中二病は、いつか卒業する定め
しかし六花は、複雑な家庭の事情があったことから、卒業する機会を失ったまま高校生になってしまいました
多少強引でも、富樫がその機会を作ったのだと思えば、それも確かに六花のためになる行為です
しかし、富樫にはそう割り切れない理由があります
六花の眼帯は「現実から目を背ける」ことのメタファーであり、富樫が「眼帯を取れ」と言ったのは、「現実を見ろ」と言ったのと同じ意味です
前話の屋上のシーンで不可視境界線の存在を肯定した矢先、富樫は六花を裏切った形になってしまいます。無責任に六花を気持ちよくさせる台詞を吐いたツケが回ってきたのです
富樫はどこかにいなくなった六花を探すために場を離れかけますが、なんと後夜祭のステージに立つ六花を目にします
飛び入りでステージに参加した六花は「見上げてごらん夜の星を」を歌います。今にも壊れてしまいそうな、囁くような切ない歌声に、呼吸するのも忘れて聴き入ってしまいました…
目を疑う富樫に、どこからか現れた十花さんが「パパが好きだった歌だ…」と頰に汗を浮かべて教えてくれます
煌々と光る黄色いスポットライトに照らされながら、六花はワンコーラス歌い上げます
小ネタ
凸守が六花のサーヴァントになったのは2年と少し前のこと
文化祭の名前は「銀杏祭」
富樫が六花母から渡された弁当箱から「現実」を感じたのはイチョウの樹の下
また、六花に「眼帯、取れ」と言ったのも同じイチョウの樹の下
・邪王真眼に捧げる鎮魂歌
第十話で特に印象的だったのは、AパートBパートエンディングの後に、不意打ちのように20秒弱のCパートがあったことでしょう
ワンコーラス歌い上げた六花は、司会者の問いかけを無視して右目の眼帯を外します
そこにはもう邪王真眼はなく、ステージに立っているのは普通の「小鳥遊六花」でした
他ならぬ富樫に言われて、六花は眼帯を取ることを決意しました。それは、邪王真眼の喪失、不可視境界線の否定、そして父の死を認めることを意味します
十花さんとの会話で富樫が触れた六花の心のわだかまりとは、父の死を悼むこと
六花にとって父の死はあまりに突然のことだったので、当初は受け入れることができず妄想の世界に逃げ込み、逃げに逃げ続けて3年が経過し、止まったままの六花を置き去りにして世界はどんどん変わっていって(売地になった実家がそれを如実に表している)、父の死を悼む機会を逃してしまったのです
つまり、「見上げてごらん夜の星を」は、お父さん、ひいては「邪王真眼」へのレクイエムだったのです
それを多くの生徒…富樫も見ているであろう後夜祭で歌うことで、「邪王真眼・小鳥遊六花」を殺す儀式を遂げたのです
しかし、「邪王真眼・小鳥遊六花」は殺せても、「邪王真眼」そのものは消し去りきれなかった六花は…おっと、ここから先は最終話ですね
つづく
【ネタバレ注意】中二病でも恋がしたい!第九話いまさら感想【動き出した物語】
ネタバレあり!
執筆者は2週目なので、1期最終話まで見ていない方はブラウザバック推奨です…!
第九話です
第九話にしていよいよ「中二恋」の「恋」の部分がフォーカスされます
前2回でシリアスが強めになったので、今回はコメディ色が強めです
もっとも、今回は富樫への恋心に気づいた六花が主役なので、明るい話になるのは当然ですけど
しかし後半戦の第九話、ただ甘いだけでは終わりません。今後に向けてちょっとした不穏の種が蒔かれています
二学期も中盤に差し迫る中、六花を家に上げた日から、彼女が自分を避けているように感じて悩む富樫
一方、「極東魔術昼寝結社の夏」は丹生谷の提案で文化祭で演劇を披露することに…
・凸守とのすれ違い
序盤、結社の面々は近所の公園に赴き、そこで文化祭の作戦会議を行います
演劇のタイトルは「邪王真眼vsダークフレイムマスター」…
富樫の中二病がコミカルにイジられ、七話以前のような平和な空気が流れます
ブランコに揺られながら会議に参加する六花
隣には凸守が乗り、振幅のタイミングを六花と合わせようとしています
微笑ましいですね
丹生谷「ねぇ小鳥遊さん、あなたも真の姿を取り戻したダークフレイムマスターを見てみたいわよね?」
凸守と六花のタイミングがシンクロした瞬間、丹生谷に富樫の名前を出されて動揺した六花はブランコを止めてしまいます
そして、凸守を置き去りにしてひとりだけ先に帰ってしまいます
なんてこともないシーンに見えて、六花と凸守の心がすれ違い、六花が中二病の世界に凸守を置き去りにする未来を暗示した高等テクニックです
・十花さん
六花は不可視境界線を信じているんだよなぁ…と富樫が自室でぼんやり考えていると、十花さんが部屋に侵入してきます
食事にほとんど手をつけない六花を心配して富樫に様子を聞きにきた十花さんですが、六花の変化に悩んでいるのは富樫も同じです。事情なんて知るはずがなく、十花さんの質問に要領を得ない受け答えをしますが、「いつも六花と一緒にいてそのザマは何だ?」と怒られてしまいます
自分で聞けばいいでしょ!?と富樫が反論しますが、「体裁というものがある。今までの姉のイメージというやつだ…鈍いな、要するに…恥ずかしい」と言い残し、帰ってしまいます
十花さんの人間くさい一面を垣間見るシーンです
推せる
・六花の恋煩い
無自覚のうちに富樫に恋をしていた六花
六花は富樫への恋心を無理やり中二病設定を作り出して誤魔化していましたが、丹生谷に見破られてしまいます
丹生谷とのやり取りの中で六花が富樫に恋していると自覚していくシーンはカタルシスが半端ないですね
何話待たせんだよ!早くくっつけ!というヤキモキした感情を一気に浄化していきました
丹生谷は文化祭準備というイベントを活用して六花と富樫をくっつけようとしますが、六花の中二病が邪魔をしてなかなか上手くいきません
上手くいかないまま迎えた夕暮れ時、最後の手段として、屋上に垂れ幕を設置する作業と称して富樫たちを校舎の屋根の上に放置し、吊り橋効果を狙います
・不可視境界線を肯定する富樫
吊り橋効果があったのかはさておき、ふたりきりにされた富樫は、六花に最近様子がおかしいことを思い切って話します
六花の家庭の事情についても「知ってよかった」と言い、「お前のこと誤解してたよ」と六花の中二病に寛容になったことを明かします
富樫は暮れなずむ夕日を見て
“毎日見ているからあんまり思わないけどさ、空が真っ赤になるってすごいよな
あんな火の玉みたいなのが消えて真っ暗になるって、考えてみるとすごいよなぁ
不可視境界線くらいあってもおかしくない、って思うよな”
「中二病でも恋がしたい!#9 混沌の…初恋煩(カオス・ハート)」より抜粋
家族に否定され続けてきた不可視境界線の存在を、富樫が初めて肯定します
心を動かされた六花は富樫の側に歩み寄りますが、足を滑らせて屋根から落ちそうになってしまいます
手すりに掴まって六花に手を伸ばす富樫でしたが、下から見ていた丹生谷が「下よ!3階からなら届くわ!」とアドバイスを送ります
悪気はなかったとはいえ、このときの丹生谷の気持ちを考えると胃がキリキリします…
無我夢中で階段を駆け降り、下の教室のベランダから、屋根にぶら下がる六花を抱きかかえて救出することに成功した富樫
死と隣り合わせだった緊張の糸が切れた六花は、富樫に抱きついたまま泣き出してしまいます
柔らかい夕陽に包まれながら、そんな六花を愛おしげに抱きしめる富樫なのでした
はっきりさせなくてもいい
あやふやなまんまでいい
僕たちはなんとなく幸せになるんだ
何年経ってもいい
遠く離れてもいい
ひとりぼっちじゃないぜ ウインクするぜ
夕暮れが僕のドアをノックする頃に
あなたを「ギュッ」と抱きたくなってる
THE BLUE HEARTS「夕暮れ」
ブルーハーツの「夕暮れ」をかけたくなるような名シーンです
「不可視境界線」がトリガーになり、ふたりはようやく結ばれました
ひとまず、めでたしめでたし
しかし、その幸せは長くは続かないのでした…
小ネタ
丹生谷の部屋に鉢植えの黄色い花が置いてありましたが、風水の考えでは黄色い花を西に置くと金運UPの効果があるそうです。みんなも試してみよう
つづく
【ネタバレ注意】中二病でも恋がしたい!第八話いまさら感想【神回】
ネタバレあり!
執筆者は2週目なので、1期最終話まで見ていない方はブラウザバック推奨です…!
第八話
富樫と六花が一夜を共にする回です
神回キタコレ
また、この回のメインテーマは「逃避」ですが、それと同時に富樫の過去の掘り下げも行われています
売地になってしまったかつての自宅
現実を受け入れたくない六花は「爆ぜろリアルーー」と詠唱し、妄想の世界に逃げます
引用元:第8話「二人だけの・・・逃避行」:STORY - ストーリー | TVアニメ『中二病でも恋がしたい!』公式サイト
強大な力を封印している左腕の包帯をこの戦闘で初めて解いたことから、追い詰められた六花の心境を察することができます
六花は現実を突きつけてくる十花さんに挑みますが、六花の中二病に付き合ってあげていた第二話での戦闘とは打って変わって彼女の攻撃を全く寄せ付けない十花さん
六花に手を上げ、無理やりにも現実を見せようとします
お玉ではなく素手で殴るところが痛々しいです
十花「ママを恨んでるのか?」
六花「…違う」
十花「爺ちゃんや婆ちゃんを困らせたいのか!?」
六花「違う!」
十花「わかってるだろ!どうしようもないことぐらい!何もできないことぐらい!」
六花「…」
十花「どうすれば満足なんだ?どうしようもないだろ?」
「中二病でも恋がしたい!#8 二人だけの…逃避行(エグザイル)」より抜粋
十花さんの問いかけに心が揺らいだ六花
たちまち妄想世界は瓦解し、六花は売地にうずくまります
それでも六花は「不可視境界線は…ある」と呟きます
現実を見ることを拒む六花に詰め寄る十花さん。その間に、富樫が割って入ります
・富樫の主張
富樫が六花の中二病を肯定する主張ですが、直接的なことは言わずに、ポエミーな回りくどい言い方をします
「俺ガイル」や「とらドラ!」でも、肝心なシーンでよくわからないセリフを吐くのは、ラノベ原作アニメの様式美なのでしょうか
ラノベでは地の文がポエムを補完して意味が分かるようになっていますが、いきなりアニメでセリフだけ聞かされてもわけわからんわ!といつも思ってしまいます。特に俺ガイル2期最終話テメーはダメだ。でも1期は大好き
以下富樫の台詞
十花さんの言うことは、その通りだと思います
でも、それがわかっているから…わかっているから、六花はこうしているんだと思うんです
現実だから受け止めなきゃって、そう言われたって受け止められないことはたくさんあって、でも、何かは次々起きて、心を整理している時間もなく、全部終わったことになっていて
「中二病でも恋がしたい!#8 二人だけの…逃避行(エグザイル)」より抜粋
ここまではまぁ分かります
逃げてるんじゃない、目を背けるつもりもない、でも当たり前の言葉で、当たり前のように済ませてそれでいいのかって思ってて
でも、みんなそれが当たり前だって言って、現実ってそんなもんだって言って、本当にそれでいいのかって
「中二病でも恋がしたい!#8 二人だけの…逃避行(エグザイル)」より抜粋
口頭で聞いただけで富樫の意図を完全に汲み取れた人はすごいです。これからも頑張ってください
後半の台詞に移ると、映像が富樫の回想に切り替わり、中学時代の、自習の授業中の教室が映ります。周りのクラスメイトは友達と遊んでいる中、富樫はひとりだけ浮いてしまったようにひとりです
引用元:第8話「二人だけの・・・逃避行」:STORY - ストーリー | TVアニメ『中二病でも恋がしたい!』公式サイト
まだダークフレイムマスターになる前の富樫の机に置かれた「自分ノオト」なる一冊のノートが映し出されます
タイトルの下に小さく書かれている文字は「我が人生」
表紙には自分の名前が大きく書かれ、その下には薄いですがペンで「Yuta Togashi 参上!!」と筆記体で書いてあります
また、表紙を縁取るようなデザインに見えた赤い丸は、よく見ると全て「富樫」の印鑑です
当時の富樫は自分の存在がなんなのか分からなくなり、いわゆるアイデンティティ・クライシスに陥ったものと思われます
クラスの連中とどこか違う自分を自覚し、もしかしたら自分は「特別」な人間なんじゃないかと想像するようになります
でも、それは思春期の中学生によくある、誰にでも起こる「普通の」反応です。たぶんネットで「自分 わからない」とかで検索してその現実を知ったのでしょう
自分の悩みは特別でもなんでもなく、自分は「普通の」人間なのだという現実を知ってしまった富樫
まぁ、現実なんてそんなもんだよな…
そう思いかけますが、その辛い現実を認めたくなかった富樫
あの時の高揚感を、まやかしだったとしても「特別」になれた、楽しかった日々を、そんな当たり前な言葉で終わらせてしまっていいのかと悩みます
どうしても「特別」な何者かになりたかった富樫は、ダークフレイムマスターとしての力に目覚めたのでしょう
なんと、わずか数秒の回想シーンで、人が中二病を患うまでの過程が丁寧に説明されていたのです
以上のことを踏まえてもう一度富樫の言葉を読んでみると、意味が理解できると思います
富樫は辛い現実から身を守るために中二病として生きる六花を肯定しているのです
(追記)
なぜこの台詞の意味が分からなかったのか、改めて考えて分かりました。それはおれが台詞の主語を富樫だと思って聞いていたからでした。本当の主語は六花ですね。いやでも急に富樫の回想入ったら富樫の話だと思うじゃないですか。え、思わない!?
・ダークフレイムマスター:ORIGIN
十花さんからの精神攻撃に耐えきれず、家に帰ってしまう六花
六花を追いかけていた富樫と電車の中で合流します
電車の中で、六花は富樫がダークフレイムマスターになったきっかけを訊ねます
最初は、友達との間にふと感じた温度差のようなものだったと言っています
世界から浮いてしまったような奇妙な孤独感を覚え、かつての何も考えずに友達と遊んでいた自分はもういない、なら今の自分は一体何者なのだ…と
そこで序盤のシーンと繋がってくるわけです
過去を語る富樫
ふと車窓に目を向けると、窓ガラスに反射した六花と目が合います
六花は「目が合った」と言い、おもむろに眼帯を外します
六花と両目を合わせた富樫に「これで、より高度な契約で結ばれた」と言う六花
第六話で遮断器の前で手を繋いだのも、親密度に応じた契約の一形態だったのだと富樫は気づきます
また、富樫が過去を語ったことで、六花の富樫に対する親密度が上がったことも表しています
・三切れのスイカ
もう夜も遅くなり、花火を終えた丹生谷たちが風呂から上がった頃、ひとり縁側に腰かけ、スイカを齧る十花さん
そばには二切れのスイカが乗った皿があり、どちらも先端だけを齧り取られています
このスイカは六花たちと一緒に食べるつもりで用意していたのでしょうが、富樫からメールをもらい、帰ってこないとわかったので、料理人らしいやけ食いをしています
切ないです
この回に限っては十花さんはヒール役でしたが、全ては六花を思っての行動であり、ひとりでスイカを齧る十花さんの後ろ姿には哀愁さえ漂います。切ない…
・「勇太の匂いがする」
団地に帰ってきたはいいが、鍵を忘れてしまった六花。富樫は仕方なく六花を家に入れます
家族は外出していて朝まで帰ってこない。朝まで六花とふたりきりというとんでもない状況
そして、小見出しの台詞は、パジャマ代わりに借りた富樫のTシャツを六花がクンカクンカスーハースーハーするシーンです
ここほんとにやばいです
富樫も動揺していましたが、初見だった中学生の頃、変な汗が噴き出て恥ずかしくて死にそうになりました
…
あのですね…
今までずっと隠していたのですが、実はおれの本名も「勇太」なんですよ!読み方どころか漢字まで同じ!
だから、富樫により感情移入して観ていたので、このシーンで理性を司る脳細胞が何千個か弾け飛びました
小ネタ
六花の部屋番号は304
幼少期、くみん先輩は親の仕事の都合で海外で過ごし、小中学の勉強は家庭教師に教えてもらっていたという箱入り娘
凸守家が超金持ちだからあまり目立たないだけで、くみん先輩の家も実はすごいのでは?
つづく
【ネタバレ注意】中二病でも恋がしたい!第七話いまさら感想【明かされる六花の過去】
ネタバレあり!
執筆者は2週目なので、1期最終話まで見ていない方はブラウザバック推奨です…!
第七話です
今までのコメディ路線からシリアス展開に変わっていく転換点となった回で、六花の過去が明かされる回でもあります
・六花の実家
夏休み、六花に「実家に帰るから遊びに来ないか」と誘われた極東魔術昼寝結社の夏の面々
コメディリリーフとして活躍する凸守
いつものメンバーで海で遊んで楽しく過ごすはずが、六花はなぜか浮かない顔で…
この回はまだ後半戦の中ではコメディ成分多めですが、ギャグ担当は基本的に六花と富樫以外です。前半ではただの賑やかしだった凸守が回を追うごとに欠かせないキャラになっていきます…
実家に帰った六花は、おばあちゃんには優しく出迎えてもらえるも、おじいちゃんとはあまり上手くいっていない様子。六花は着いて早々部屋に引きこもってしまいます。十花さんに促された富樫が部屋に行くと、六花は部屋の隅で無線機をいじって電波を傍受しているところでした
不可視境界線の向こうと通信している最中らしいです
六花ちゃん無線趣味なのちょっとかっこいいですね…と思いかけましたが、六花からすれば趣味とかそんな単純なものではないのでしょう
それを裏付けるように、六花はおもむろに自分の過去を少し語ります
“そもそも、ここは私の拠点ではない
むしろ、管理局が本部を置く敵の拠点
2年前、私はここに連れて来られた
一見何事もない屋敷、しかしここには不可視境界線の存在を無効化する結界が張られている
精神攻撃及び負荷が増大
だから私は脱出した
この結界を破るには必要だった
「邪王真眼」の力が”
「中二病でも恋がしたい!第七話 追憶の…楽園喪失(パラダイス・ロスト)」より抜粋
まだこの時は六花の言いたいことがわからない富樫。しかし、十花さんにある場所に連れられて、なんとなくその意味を悟るのです
・お父さん
十花さんに言われて「六花の父親のところ」に付き合う富樫。着いたのは小鳥遊家のお墓の前でした
お線香をあげた富樫は、十花さんからお父さんの話を聞きます
お父さんが亡くなったのは3年前のこと
そのとき六花は中学1年生
まだ小さかったこともあり、六花にだけは教えないでほしいとお父さんに言われていたそうなのですが
何を教えないでほしかったのか、お父さんの死因は何なのか、この時点では十花さんはぼかすような言い回しをして分かりませんでしたが、最終話ではっきりします
最終話を参照すると、お父さんは何かの病気に冒されていて、ある日余命宣告を受けたのでしょう
医者に余命宣告を受けたとき六花はおそらくまだ小学生でしょうから、六花がショックを受けないように、心配させないようにという父の「無言の愛」がそうさせたのだと思われます
ここでひとつの謎が解けます
電車で実家に向かう道中、六花が浮かない様子だったのは、十花さんたちによってお父さんの死という現実を受け入れさせられる、六花風に言えば「管理局の人間によって精神攻撃を受ける」からだったのです
・管理局
ところで、六花が度々口にする「管理局」とは一体何なのか。管理局の人間とは、誰のことを指すのか。それもこの回で明らかになりました
管理局とは、六花の中二病、つまり不可視境界線の設定、ひいては不可視境界線の向こうにいる父の存在を否定して、六花に父の死という現実を見せようとする人たちのことをそう呼んでいるのだなと、この回で答え合わせができます
六花は不可視境界線の設定を作って父の死という現実から目を背けますが、六花以外の家族は当然それを否定します。そこで、六花は現実逃避している自分を正当化するために
「不可視境界線の存在を知っている自分と、それを否定、隠蔽しようとする組織」
という構図を思いつき、管理局という敵対組織を作り上げたのでしょう
・不可視境界線を見た夜
六花は、お父さんが亡くなった日の夜、水平線の向こうに輝く一面の光を目にします。その神秘的な光景に、六花はこの光の向こうに父がいるように想像します
それは単に船が放つ光でしたが、立花は現実に目を向けるよりも、このときの自分の想像に縋ってしまいます
辛い現実を受け入れがたい六花はそのときの光を「不可視境界線」なる異世界との狭間と設定し、その向こうに父がいると思い込んで現実逃避します
それから3年経ち、もう高校生になった六花は、不可視境界線なんて本当はないことは分かっているのでしょうが、それでも、父の死という現実を直視することができずにいつまでも眼帯を被り続けます
高校生にもなって現実に向き合おうとしない六花に、十花さんが苛立ち、心配していることを富樫は改めて知ります
これまでは六花の中二病萌えを存分に見てきたので、この回で「父の死を受け入れられずに何年間も現実逃避を続けている」という彼女の負の側面を見せつけられておれはちょっとショックでした
家族の誰もが六花の不可視境界線を否定する中、富樫だけは一緒に探しに行こうとその存在を肯定します
行手を阻む十花さんを振り切り、六花と富樫は実家を抜け出し、かつて六花がお父さんと暮らしていた家に向かいます
富樫が六花を外に連れ出したことで、「ダークフレイムマスターは最強!」と、実家に帰ってから塞ぎ込んでいた六花を笑顔にさせます
軽快な音楽に乗って自転車(ラートツヴァイヘルブラウ)を走らせますが、そこにはかつての家は跡形もなく、雑草が生い茂る売地になっていました
言葉を失う六花に、車で先回りしていた十花さんが一言「これが現実だ」
六花は眼帯の奥の目から涙を零し、ふらりと、「シュバルツゼクス ・プロトタイプMk-2」を構えます
管理局が見せる“現実”がなんだっていうんだ
「爆ぜろリアル」
私には邪王真眼の力がある
「弾けろシナプス」
消えてしまえ、こんな世界
小ネタ
六花の実家の最寄駅「東浜見駅」のモデルは福井県三方郡にある「東美浜駅」
中二恋の聖地として知られている
売地になってしまった六花の家に咲いていた黄色い花はマツヨイグサに似ています
(あまり自信ありませんが…)
花言葉は「移り気」、「ほのかな恋」そして「無言の愛」
つづく
【ネタバレ注意】中二病でも恋がしたい!第六話いまさら感想【さらば友よ】
ネタバレあり!
執筆者は2週目なので、1期最終話まで見ていない方はブラウザバック推奨です…!
第六話
もう折り返し地点です
節目の回に何をするかと思えば一色坊主回です
六花成分は少なめですが、男子高校生のバカバカしいノリ全開で何度見ても笑える良回です
また、六花の過去に触れていく七話からの後半パートはどうしてもシリアスになってしまうので、前半のコメディ中心の脚本のふざけ納めのような、ちょっと切ない回でもあります
・「群れるのは好きじゃない」
期末試験も終わり、もう七月。一学期もそろそろ終わりが近づいてきました
だというのに六花は相変わらず富樫と丹生谷以外のクラスメイトに馴染めないまま
その状況を憂慮した富樫に返した一言
「そもそも群れるのは好きじゃない」
人見知りな中二病が言いがちなやつです
あとは、「馴れ合いは嫌いだ」とか、「ひとりじゃなんにもできない子羊ちゃんどもめ…」とかも言いがちです。ぜんぶおれやんけ
でもまぁ、六花には極東魔術昼寝結社の夏(長い)という居場所があるし、富樫や凸守など少数でも分かり合える友達がいるので余計なお世話な気はしますが
あとこの美術の授業のシーンは富樫の前の席のモブキャラの枚方さんが長台詞をもらったシーンでもあります。どうでもいいですねはい
・「優しい女の子」という罠
匿名でラブレターをもらった一色。モテたいアピールしてたけど、まさか本当に来るとは…と、あまりの緊張に混乱気味
ピュアな一色に終始塩対応の富樫。最初はそれが本当にラブレターかどうかも信じず、イタズラの可能性を疑います
「質問2。それは男子のイタズラではないですか?」
富樫くん…過去に色々あったんだろうなぁ…
どうしてもラブレターの差出人が気になる一色。どの女子にも心当たりはないそうですが、「強いて言えば丹生谷…?」などとほざきます
一色くん見事に童貞トラップに引っかかりましたね。俺に優しい女の子。それは誰にでも優しい女の子。富樫はそれに気づいています
しかもそれを聞いている富樫は丹生谷の裏の顔を知っているので、二重に勘違いしている一色に苛立ちます。そして「ないんだよ!それだけは断言できんだよ!」と激昂
野郎の恋バナってなんかいいですよね!青春って感じで!この空気がとても好きでいつも以上ににやけてしまいます
手紙の差出人がどうしても気になる一色は、帰り道の途中、富樫と丹生谷に相談します
六花はひとりだけ彼らから離れて遮断器の前に立っています。風を読んでいるのだそうです
話を終えた丹生谷と一色が先に帰り、富樫も遮断器の前で立ち尽くす立花を連れて帰ろうとすると、「勇太、手を」と六花に言われます
言われるがまま手を差し出すと、六花はその手をいきなり握ってきます
驚く富樫に「じっとしてて」と諭すと、遮断器が降りた目の前を電車が通り過ぎていきます。夕暮れ時の電車が放つ光のきらめき、線路を走る車輪の唸るような轟音、空気を切り裂いて発生する風を、手を繋いだふたりは間近に全身で感じます
・「手繋ぎ」の意味は
このときの六花に、わずかでも恋愛感情はあったのか、それともなかったのか…
解釈は人それぞれ、真相は六花のみぞ知る…
基本的にはそれでいいと思います。しかしおれは恋愛感情はない派で話を進めさせてもらいます
一色が丹生谷に事情を打ち明けるシーンですが、六花はひとりだけ彼らから離れて遮断器の前に立っていました
これ、ただのマイペースな中二病ムーブというより、意図的に恋バナを避けているように見えるんですよね。本当に風を読むことだけが目的なら、携帯電話を握りしめる必要はないわけですし
富樫のベッドの下の青年誌を読むだけで顔が真っ赤になるピュアな六花は、あまり恋愛沙汰に興味が持てず生きてきたのでしょう。でも、富樫を含めた自分以外は全員楽しそうに恋バナをしている。その疎外感からひとりでいることを選んだ
恋バナをしていた一色と丹生谷がやっと帰り、自分のもとにやってくる富樫。待っていたぶん富樫と一緒に中二病したいと思い、手を取って一緒に風を感じたのだと思います
手を繋いだのもそこに深い意味はなく、七宮の鼻ポチと同じ感覚の、親愛の印かと思われます
これは別に異性として意識しているとかではなく、富樫と六花の人としての親密度が上昇した結果でしょう
新しいメアドを考えたのがポイント大きそうです
あとは、自分の知らない話題で盛り上がっている富樫を見てなんとなくちょっと寂しくなったのではないですかね
なんにせよ、作品後半で実際に富樫と付き合った立花はまともに手も繋げない照れ屋さんだったので、もしこの時点で多少なりとも恋愛感情を持っていたとしたらこんなにグイグイ行けないでしょう
ところで、このシーンにちょくちょくカットインする植え込みに生えている黄色い花は、よくわからないですがおそらく「ルドベキア」ではないかと思われます。自信がないので詳しい方教えてください
例によって花言葉を調べてみると「正義」「公正」「あなたを見つめる」…!?
前半ふたつの意味は、カワイコちゃんグランプリなんかを主催する一色に正義が執行されることを暗示していたのでしょう
しかし最後の意味、これは…!?
あなたを「見つめる」
そう、邪王真眼!
そして、花びらの色が黄色→邪王真眼も金色
これはもう六花の未来を暗示しているのでしょうそうに違いありませんぐっはああああああああああ!!
・髪は男の命!
一色の剃髪シーンは涙なしには見られない爆笑間違えた感動のシーンです
カワイコちゃんグランプリを主催し、クラスの女子をランク付けしていることがバレてしまった一色。他の男子を庇うべく責任を自分ひとりで被り、頭を丸めてお詫びします!とクラスメイト全員の前で言い切ります
一色からすれば誠意を見せるためのパフォーマンスのつもりで本当に髪を切るつもりはなかったのですが、丹生谷に行動で示さないと女子は信じないと言われてしまいます
墓穴を掘った一色、散々嘆いた挙句…ケジメを付けることを覚悟します
この後の夕陽に照らされながらの一色と富樫の会話は、作内指折りの名(迷)シーンです
よく「髪は女の命」だなんて言いますが、男だって髪は大切です
思春期の男がいかに髪を重視しているかは、作品が違いますが「あたしンチ」のユズヒコの床屋回が的確すぎるほどに表現しています
しかしまぁ、身から出た錆、口は災いの元、雉も鳴かずば撃たれまい…
ちょっとカッコつけすぎたためにデカすぎるバチが当たった一色でしたが、結果的に男子の中で人気者になり、くみん先輩に可愛がられるようになりました。結果オーライ!髪は来世に期待!
・リア充街道を驀進する富樫
なんだかんだきちんとクラス委員を務める富樫。女子のボスの丹生谷とは部活仲間で対等な関係にあります
友人の一色は陽気なクラス(の男子)の人気者、そして一見イイ感じの可愛い女の子までいる
富樫お前はまごうことなきリア充だ!この野郎!お前もう二度と冴えないアピールするな!
この回はキャラの動きがジブリっぽい感じがしたり、風景の色づかいつもとちょっと違ったりして、期末試験が終わり終業式を待つばかりの消化試合のようなある種非日常的な学校生活の中、一通のラブレターから起こる騒動が非日常をカオスに彩る、独特な空気感が素敵でした
小ネタ
・一色は父が35歳で禿げたことから自分も同じ道を辿るのではと懸念しているが、ハゲ遺伝子は母方の祖父のものを受け継ぐらしいので一色はまだワンチャンある
・髪の老化には白髪タイプとハゲタイプがあるは迷信。よって白髪が生えているからハゲないは嘘。白髪ハゲの人はいっぱいいる
・マス・ターベーションのやりすぎは男性ホルモンが過剰分泌されてハゲの原因になるは迷信。AGAメディカルクリニックが否定している
・育毛剤には毛根を復活させる効果はない。それは発毛剤。育毛剤は今ある髪を抜けにくくする程度の効果
・また、医薬部外品の育毛剤はその程度の力すらないカス。詐欺に片足突っ込んでいる
もはや作品関係なくなってしまいましたが、次回は急展開です
夏休み、父が単身赴任先のジャカルタから帰って来られなくなり、富樫家はジャカルタに向かうことに
それと同時に、富樫は十花さんから意味深な依頼を受けます
「夏休み、六花と一緒に来てほしい。お前が、必要だ」
つづく